なぜ?管理員デジタル白書を作るのか
〜kanri.onlineが管理員デジタル白書を作ろうと思った理由〜
こんにちは。kanri.online代表者の茨木と申します。
kanri.onlineとその運営主体明和地所株式会社が、65歳-75歳のアクティブシニアを中心に大規模なアンケート調査を行っていることに戸惑いを持っている方も多いのではないかと推察します。その背景をご説明させていただければと思っております。
「想いをかなえ、時をかなでる。」明和地所グループ
明和地所グループは、主に分譲マンションを販売しています。製造・販売・管理を一体に取り組んでおります。ブランドコンセプトは、「想いをかなえ、時をかなでる。」です。明和地所グループは、土地を仕入れて、分譲マンションを作り、販売して終わりというのではありません。当たり前の話ですが、お客様にとって分譲マンションの購入は、新しい生活のスタートであります。マンションを買っていただき、暮らしていただき、日々の暮らしの中で、お客様が想いをかなえて 時を奏でていくことこそ、我々社員の喜びであるのです。そういった意味で、分譲マンションを買っていただいたお客様に良いマンション管理を提供することを重視しており、その顧客満足度を高めることを、全グループとして優先課題として取り組んできました。
マンション管理会社を悩ませる管理員不足という問題
マンション管理といって思い浮かべるのは、管理員であると思います。マンション管理の仕事は、外から見える仕事ではないので、その業務をよく知る人は少ないと思います。様々な活動を通して、分譲マンションのオーナー様、居住者の皆様の暮らしを支えているのが、マンション管理業です。
そのマンション管理業において、現在切実な問題になっているのは、管理員不足です。明和地所グループだけでなく、ほぼ全てのマンション管理会社にとって、頭痛の種であると思います。
2010年当時、60-70歳の方を雇用して、管理員になっていただくことが多くございました。その時の、日本の人口ピラミッドはこちらです。
出典:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ (https://www.ipss.go.jp/)出典:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ (https://www.ipss.go.jp/)いわゆる団塊の世代が、管理員予備軍の世代に入り、60-70歳の管理員のなり手は多い状況でした。定年の引き上げもまだら模様で、会社員を60歳で定年退職し、60歳から管理員として働く方々がたくさんいらっしゃいましたし、65歳の定年を迎え、70歳までを管理員として働く方々も多くいらっしゃいました。
ところが、2020年になりますと、日本の状況は、大きく変わります。
60-70歳の人口ピラミッドはちょうど「くびれ」ております。「団塊の世代」と「団塊ジュニア」に挟まれた世代となり、一気に管理員のなり手は減りました。
また、マンションの管理員だけでなく、世の中全ての労働力も不足しており、大企業の中でも定年延長が当たり前となり、65歳までの雇用も増え、場合によっては継続雇用も増えたため、管理員のなり手はさらに厳しくなりました。
当然、人件費も上がります。時給をあげても人は限られておりますので、10年前と同じ品質のサービスを供給するのは容易ではありません。
マンション管理においては、2010年代と2020年代では大きく環境が異なり、管理員が不足する時代となっているのです
ワンオペ・シニアをITでエンパワーする
「管理員の時給をあげて良い人を採用すればよい」と思うかもしれませんが、それが、分譲マンションのオーナー様や居住者様によいことなのかは、ケースバイケースです。単純に、管理員の給与が上がれば、マンション管理費も上がってしまい、オーナー様への経済的な負担も増えてしまいます。
ですので、オーナー様の「想いをかなえ、時をかなでる。」には、マンション管理業務の効率化をはかり、短い時間で業務をこなす、徹底的に業務の無駄を省くことが必要になってきます(業務効率化をはかっていても、管理員の時給は確実に上がっていますので、管理員費用の値上げをお願いせざるをえない状況です。何も効率化せず、時給だけをあげることの経済的なコストはかなり大きいと推察します)。
マンション管理会社としては、管理員というアクティブなシニアの方々を応援し、エンパワーメントする必要があると我々は考えます。
また、100戸未満のマンションでは、管理員がフルタイムでいることは少なく、また一人で勤務することが多いのも現実です。飲食業で話題になったいわゆる、「ワンオペ」状態にある管理員さんを支援する何かが必要です。
マンション会社には、各マンションの担当営業たるフロントがいるのですが、フロントは頻繁に管理員のいるマンションには訪問できません。管理員は、孤立無援の孤独な仕事になってしまいがちなのです。
コンビニにはPOS端末があるが、マンションには端末がない
ふと、コンビニをみますと、店員さんはPOS端末を使っています。業務を支援するIT機器があり、本部から指示やノウハウを提供し、店員さんをエンパワーして、高い業務品質を支えています。食品スーパーに目をうつせば、業務効率化が進み、店員さんとレジの横には、支払い用の決済端末がおいてあります。どこも、人材不足で悩む業界は、ITとIT機器で働く人をエンパワーして、支援しているのです。
ところが、マンション管理の管理員の周りには、IT機器も情報システムもありません。ただ、管理員室に固定電話とFAXがあるだけ。そのような状況に管理員は置かれておりました。
これではいけないと、明和地所は、kanri.onlineを作りました。
管理員にiPadを配り、マンション管理会社との意思疎通を通じて、管理員さんをエンパワーするというのが、kanri.onlineの役割です。おかげさまで、kanri.onlineを導入した明和管理は外部の評価でも高い顧客満足度を獲得することができております。
アクティブシニアのITリテラシーは着実に向上している
管理員は、働くシニア世代で、現在では、65歳-75歳の方々がボリュームゾーンとなっております。2017年にkanri.onlineを始めた頃、スマートフォンを自由に扱う管理員の比率は多くはありませんでした。なので、kanri.onlineは、ITリテラシーを必要としない作りにしました。現状のマンション管理員がすぐに使えるように様々な工夫を凝らしました。
世の中を見てみると、年代ごとにコミュニケーションの分断が起きています。90歳のひいおじいさんは電話を使います。65歳のお婆さんはスマホには不慣れで最近LINEを始めました。38歳の父親は電話で連絡することは少なく、facebook messengerで連絡をとっています。10歳の子供は、iPadの動画でスクラッチを学習をしており、facebookなどは当然使いません。みんなが同じメディアで情報を共有するのは難しいのが最近です。
企業においても、コミュニケーションツールの分断は深刻です。若いエンジニアはSlackを使いたがりますが、定年延長組はFAXでの連絡を譲らないかもしれません。しかしながら、マンション管理業は、少なくとも、20代から70代の人々が協力しないと成り立たない業態です。世代を超えたコミュニケーションツールが必須だったので、kanri.onlineでは、それを試行錯誤しながら作りました。
2017年からkanri.onlineの導入をしてみると、この5年間で、随分と60代、70代のITリテラシーが高まっていることを感じます。昔は説明の必要があった事柄も、現在では、説明する必要がなくなってきました。
ここ近年、60代、70代のITリテラシーの向上を感じます。
kanri.onlineのような製品は、管理員のようなアクティブシニアの皆様にお使いいただく必要があるので、その前提としてよいITリテラシーを計測、把握し、アクティブシニアにとっても使いやすい製品を進化させていくことが必要なのです。
アクティブシニアの統計は一括になりがち
kanri.onlineの導入の中で苦労したのは、年齢によるITリテラシーの違いです。同じ60代でも、60歳と65歳と69歳ではITリテラシーが違います。70代も違います。もちろん、個人差もありますが、やはり60歳と75歳では前提となるITリテラシーの平均が違います。しかし、世の中の統計を見ると、高齢者で65歳以上を一括りにした統計しかありません。
私は、年齢別に、60歳と75歳のITリテラシーの違いを説明した資料は探し出せませんでした。
現在、働く65歳以上の方は、50%を超えたと言われており、働いているアクティブシニアの皆様は、社会の中でのメインプレイヤーの一人であると思います。しかし、そのITリテラシーが正しく把握されない現状は、アクティブシニアを活用すべき日本経済にとっても残念な事ではないでしょうか。
アクティブシニアを対象に、よりメッシュの細かいITリテラシーの調査を行うことで、アクティブシニアのエンパワーメントを社会全体で進めることができるのではないか、という考えが管理員デジタル白書を始める動機となりました。
アクティブシニアの調査が手軽にできるkanri.online
kanri.onlineにはアンケート機能があります。こちらを使うとアンケートは容易にできます。
kanri.onlineは現在、明和管理において800棟を超えるマンションに導入されています。そこで働く管理員さんが、スマホを持っている/いないにかかわらず、iPadでkanri.onlineを使用しています。
21世紀になるとアンケート調査はデジタル化が進みました。しかし、現在、IT機器が行き渡らない高齢者の調査を、自宅のPCや持っているスマホ経由で高齢者のアンケートで行うことには無理があります。IT機器を使えない人は答えられないからです。
kanri.onlineは、普通の管理員さんが使っているので、そのアンケート調査は、アクティブシニアの実態に近いITリテラシーの調査を、デジタルに行える媒体であると思います。
こういったkanri.onlineというメディアを用いて、アクティブシニアの実態を調査し、世の中に公開する事でよりよい世界を作ることにつながるのではないかということで、今回、管理員デジタル白書を作ることとしました。
一緒に作り上げたい管理員デジタル白書
kanri.onlineのアンケートには、多少の母数に偏りはありますし、調査分析の人材も、統計のプロフェッショナル、というわけには行きません。また、我々のマーケティングの視点も足りぬところがたくさんあるでしょう。
是非とも、kanri.onlineというメディアを使って、世の中のアクティブシニアの活用や、マーケティングにお役に立てれば、幸甚と思っております。
共同調査などの協業のお誘いをお待ちしております。
※ 明和管理株式会社は、2023年4月1日付で「明和地所コミュニティ株式会社」に商号を変更しました。